2012年10月28日日曜日

均整美より自由奔放さに魅力を感じた庄司紗矢香のヴァイオリン

 昨日(10月27日)、「北九州国際音楽祭」で庄司紗矢香のヴァイオリン演奏会(黒崎ひびしんホール・大ホール)を聴いてきました。ピアノはジャンルカ・カシオーリ。曲目はヤナ—チェク《ヴァイオリン・ソナタ》、ベートーベン《ヴァイオリンソナタ第10番》、ドビュッシー《ヴァイオリンとピアノのためのソナタ》、シューベルト《幻想曲ハ長調》。
 ここのところの異常な睡眠不足からくる睡魔と闘いながらも、なんとか頑張って集中して聴きました。確かな技巧とまじめな楽曲解釈に感嘆しましたが、なかでも秀逸はシューベルト《幻想曲ハ長調》。均整美を優先した音楽より、即興的な、幾分、自由奔放な表現を要求される音楽に庄司本来の感性がよりよく発揮されているように思いました。アンコール2曲目に演奏されたアルフレード・シュニットケ《古い様式による組曲》から〈第五曲パントマイム〉の演奏も彼女の感性がよりストレートに発揮されていて私は感激しました。彼女にはこうした現代曲にも積極的に取り組んでほしいと思いました。
 ピアノのジャンルカ・カシオーリもなかなか素晴らしい。私はグレン・グールドとの親縁性を感じました。《幻想曲ハ長調》冒頭などは、ピアノ1台で鳴っているとは思えないほどの多彩な音色で私の耳を引き寄せました。
 なお、「北九州国際音楽祭」のプログラム冊子の文章から感じられるこの音楽祭企画の「能天気ぶり」には違和感を覚えました。別に音楽祭が政治や社会問題を反映する必要はありませんが、なにか現実社会を離れたオタクのはしゃぎぶりばかりが目につきました。
 黒崎ひびしんホールは今年7月にオープンしたばかり。私の席は1階の前から9列目。ヴァイオリンの音が十分の音量で私の耳に届いてきました。非常に響きのよいホールのように感じます。ただし、ホワイエの雰囲気が味気なさ過ぎるし、狭いようにも感じました。加えて、塗料のにおいがまだ強烈に残っていて、この種の臭いに敏感な私のような者にはちょっと辛いものがありました。