2012年9月29日土曜日

「気合い」がすべてにまさった

 九州交響楽団第319回定期演奏会(9月24日、アクロス福岡シンフォニーホール)を聴いた。指揮は現田茂夫。曲目は、パウル・ヒンデミット《ウェーバーの主題による交響的変容》、カール・オルフ《カルミナ・ブラーナ》。
 いずれも20世紀の作品である。と言うよりも、我々日本人にとっては、昭和年代に作曲された音楽、と言った方が時代的な近さを感じるはずだ。ヒンデミットの作品は昭和18年、オルフのは昭和11年である。モーツァルトやベートーベンもすばらしいが、20世紀の作品には、やはり感性的な近縁性を感じる。こうした20世紀以降のクラシック音楽を普段からもっと聴きたい。管弦楽の慣習を無視した前衛音楽は、コンサートのレパートリーにはなり得ないが、こうしたクラシック音楽を踏襲した20世紀音楽はもっと演奏されてよい。
 《ウェーバーの主題による交響的変容》は非常に親しみやすい。古典派から前期ロマン派音楽のスタイルの20世紀における良い意味での「焼き直し」。ヒンデミットの作曲技法が冴えわたっている。特にオーケストレーションが巧みで、非常によく響く。現田の指揮はこの音楽の古典的(非ロマン派的)な側面を強調した演奏。キビキビして気持ちがよい。第3楽章後半の装飾的な助奏を担当したトーマス・シュミットのフルート演奏は秀逸。
 《カルミナ・ブラーナ》は大人数(300名以上?)の合唱を伴ったカンタータで、劇的表現の起伏に富んだ音楽。しかし後期ロマン臭はまったくなく、 演奏に長時間を要し(1時間以上)、大音響が長く会場をつつみこんでも、なにかつねに親近感を漂わせた音楽。つまり親しみやすい。「展開」というより「並置」が基本的な構造になっている。
 今回の演奏は、細部をあれこれあげつらいたいという気持ちを超えて、「気合い」がすべてに勝り、響きの中に聴衆を包み込み、有無を言わさず感激をもたらしてくれた。現田はこの音楽をひとつの持続の中にきちんと位置づけ、中だるみを最小限に抑えて、最後まで聴き手を引っ張って行った。
 残念だったのは、ステージの広さの関係からか、3名のソロ歌手が管弦楽の後ろに位置していたことだ。そのため視覚的に存在観が稀薄で、楽章によっては管弦楽との音量バランスが悪くて声が充分に聴き取れない、ということがあったからだ。