8月1日、チョン・ミョンフン指揮アジア・フィルハーモニー管弦楽団をアクロス福岡シンフォニーホールで聴きました。曲目はシューベルト《交響曲第7番ロ短調「未完成」》とベートーベン《交響曲第3番変ホ長調「英雄」》。クラシック音楽大好き人間である私は何を聴いても、音楽に集中できる時間が持てること自体がうれしく、それなりにいつも感動します。
今回も同様です。チョンの指揮は表情が細かいところまで息づいていて、私は大好きです。前の月に聴いたゴロー・ベルク指揮九響の《英雄》ようにテンポが速すぎると感じることもなく、ベルクが与えた乱れた感じの第2楽章の複前打音の箇所も巧みに処理されていました。さすがと感じました。
しかしオーケストラはやはり「寄り合い所帯」の感は拭えず、深い満足を覚えた、とはとても言うことはできません。これはヨーロッパで大都市の有名オーケストラの定期を聴いてきた体験からの感想です。事前の鳴り物入りの紹介が大きい演奏団体に関しては、期待値も比例して大き いだけに、評価基準がどうしてもきびしくならざるを得ません。したがって、知人たちが素晴らしい演奏だったと、皆、褒め称えていましたが、これは比較の上での話です。アインザッツは不揃いな箇所もないわけではなく、楽器間のバランスもいまいちの箇所が散見でき、第3楽章のホルンはよかったものの、管楽器のアンサンブルもいつも安心して聴けるばかりではありませんでした。何かコクが感じられません。弦楽合奏ももっと上手い楽団はいくらでもあるように思いました。しかしそれ はそれで、聴き手としてはたのしんだのですが‥‥‥。
それにしても今日のコンサート、チラシには演奏曲目として「ベートーベン《交響曲第3番変ホ長調作品55「英 雄」》ほか」と書いてあるだけでした。これは不親切きわまりないと思いました。いろいろなクラシック音楽の楽しみがあることは否定しませんが、クラシック音楽の最も本格的な楽しみ方、いわゆる“通(つう)”の楽しみ方は音楽の構造聴取です。クラシック音楽の構造は複雑で、事前に楽譜でも見て予習しておかないと、コンサートでは構造聴取による感動までなかなか行き着きません。だから、チラシに曲目が書いていないのは不親切きわまりないのです。予習できないからです。実はこの予習することは、コンサートでクラシック音楽を聴く際の大きなたのしみのひとつなのです。
また、アジア・フィルハーモニー管弦楽団の実態も伝わりにくい。本拠地はどこで、メンバーは固定しているのか、毎回の寄せ集めなのか、何も情報がありませ ん。プログラム冊子には団員の紹介は一切なく、コンサートマスターの名前すら書いていません。ようやくチラシの束の中に英文表記の団員名リストを発見しま した。記録するという観点から言えば、プログラム冊子にきちんと団員リストを表記すべきだと思います。「寄せ集め」の管弦楽団ならばなおさらです。
今回のツァーでは、福岡以外のどこでコンサートを実施するのかも書いておらず、1日の福岡のコンサートの位置づけも不明でした。また、なぜアジアなのかもよく分かりません。欧米にないクラシック音楽のあたらしい潮流を創造しようとしているのか。そうであるならば、曲目編成にも独自なものを。たとえばアジア出身の作曲家の作品を紹介するなどの試みがあってもかまわない。いや、おおいにそうすべきではないでしょうか。
今回もアクロス福岡主催のコンサートのプログラム冊子はお粗末の一言。曲目解説ついては、それを書くことで聴衆にどのような情報を与えようとしているのか、さっぱり理解できません。文章そのものもまずい。執筆者の柿沼唯は書く力を本来持っていると思うが、正直言って、気を抜いているようにしか思えぬ文章でした。また、ページレイアウトも行間が狭く、はなはだ読みにくい。こういうのはきちんとしたテンプレートがあるはずなのだから、それに適うように原稿を書いてもらえ ばよいのではないか、と思いました。
会場はけっこう空席が目立ちました。もったいない、と思います。チョン・ミュンフンの名前があってもこれなのです。けっして福岡の聴衆が悪いのではありません。主催者の創意工夫と聴衆への愛で、空席は減らせると思います。偉そうなことを言って申し訳ありませんが、私の周りの一致した意見でした。
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