2012年8月21日火曜日

年に1回の定期だけなんて!‥‥アクロス弦楽合奏団第6回定期演奏会 


 819日(日),アクロス福岡シンフォニーホールで「アクロス弦楽合奏団 第6回定期演奏会」を聴いた。曲目はロッシーニ《弦楽のためのソナタ第6番ニ長調》、J.S.バッハ《2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調》BWV1043、ヴィヴァルディ《4つのヴァイオリンのための協奏曲変ロ長調》RV553、グリーグ《2つの悲しい旋律》op.34、スーク《弦楽合奏のためのセレナード変ホ長調》op.6
 アクロス弦楽合奏団はアクロスヴァイオリンセミナーの講師景山誠治の呼び掛けによって発足した弦楽合奏団である。地域在住の団員はわずかで、団員の多くは東京で別個に演奏活動をしている。その関係で、定期演奏会は年に回しか行うことが出来ないようだ。その意味では福岡からの音楽文化の創造発信を直接的に目指しているのはなく、福岡の人に鑑賞機会を与えることを目指しているようだ。つまり外来や中央からの演奏団体の「買い取り」公演と大差ない。せっかく福岡ゆかりのアクロスの名前を冠しているのであれば、それ以上のことをアクロス福岡は地域の人々のためやってほしい。
 演奏そのものは、東京のオーケストラの首席奏者レベルの者を集め、アクロス福岡の全面的バックアップを受けてリハサールなども集中的に行っているだけに、「うまい」。ロッシーニやグリーグ、スークなどの普段余り聴く機会のない音楽を聴くことができたのも、嬉しかった。
 ただし演奏上ではいくつかの不満もあった。バッハでは2つのソロヴァイオリンパートの音量に差がありすぎて、ソロヴァイオリン同志の絡み合いがあまり聴き手に伝わってこない。第1楽章では合奏にメリハリを欠いた部分もあった。また、グリークではその第2楽章においてチェロの主旋律を彩るはずのヴァイオリンパートが音量的に目立ちすぎ、その主旋律が充分に伝わってこない。スークにも同様のところがあった。また、グリーグやスークなどの曲は、本来もう少し大きめの編成の弦楽合奏でやった方が、旋律線がくっきり伝わり(特に低音弦)、和声そのものも倍音効果でより豊かに響く。和声音楽様式のロマン派以降においては、通常のオーケストラの弦楽パートくらいの数による合奏の方が私は好みだ。つまり逆に言えば、バロック様式の室内弦楽合奏団の良さがこれらのグリーグやスークの演奏ではあまり感じられなかったということである。
 この合奏団は指揮者を置かないのがポリシーなのだろう。しかしおそらく指揮者がおれば、楽器群間の音量や表情のバランスの調整がつき、例えば「チェロの主旋律を彩るはずのヴァイオリンパートが音量的に目立ちすぎ、主旋律が充分に伝わってこない」というようなことはないだろうと思った。
 なお、ヴィヴァルディの4つのソロヴァイオリンという協奏曲の編成はおもしろい。一つの音楽線を4つのヴァイオリンが分奏するという形態は非常に効果的で、特にその第2楽章ラルゴの美しさには固唾をのんで聴き入ってしまった。私自身、この編成で音楽を作曲してみようというアイデアを得たほどだ。
 さて、毎度のことだが、今回のプログラム冊子にも不満があった。写真入りで演奏者のことを紹介しているのはよいと思うが、バッハとヴィヴァルディの協奏曲でソロを弾いているのが誰か、プログラムにはまったく触れられていない。2階4列の私の席では演奏者の顔などまったく見えず、プログラム冊子の写真とも照合がつかない。これではソロ担当の演奏者にも失礼だ。
 それと、合奏団のこれまでの活動記録がプログラム冊子には書かれていない。福岡ゆかりの演奏団体としてアクロス弦楽合奏団のファンを増やしていこうとすれば、これは必須だ。また、今後どのような方向を目指していこうとするのか、地域の人にアピールするメッセージもほしい。
 あらためて言いたい。外来や中央からの演奏団体の「買い取り」公演との明確な差別化をはかるようにしてほしい。福岡のひとのために。

0 件のコメント:

コメントを投稿